20th 1月
2010
昨日開催されたJICA主催の公開セミナー「BOP ビジネスの可能性とJICA との連携」に参加して参りました。会議場いっぱいの大盛況で、日本での「BOPビジネス」の高まりを感じました。
以下プログラムに沿った概要です。
①開会挨拶 黒田篤郎氏(JICA理事)
・途上国への資金のフローの8割が民間セクター。ODAは全体の2割に過ぎない。
⇒開発援助政策に占める民間との連携は重要。
・昨年日本は「BOP元年」。開発援助機関、民間セクター、NGOの各アクターが連携し、Win-Winの関係を築くことが求められる。
・JICA、民間企業のBOPビジネス促進・支援を行うための制度を3月に立ち上げる予定。
②基調講演 原丈人氏(アライアンスフォーラム財団代表理事)
・デフタ・パートナーズは最先端技術を使って現地の人々に役立つことを行い、それを事業として成り立たせることを目的。世界最大のNGO、BRACと合弁でbracNet社を設立。
・最先端の無線技術WiMAXを使用したインターネットの通信インフラを構築
・ダッカ市内全域でのインターネット接続、農村にもインターネットを普及。
・この事業はNGOとの合弁である為、得られた利益を公益事業に利用できる。
・インターネットによって農村では、ダッカ市場の取引価格をチェックすることができるようになり、農産物を仲買人に買いたたかれることがなくなった。
・会社の最終目的は「株主の利益」ではなく、会社での利益を通じて、社会に役立つことをするということ。
③映像資料 「ヒンドゥスタン・リーバ社とアラヴィンド眼科病院の事例」
④JICA報告 「BOPビジネス連携制度の概要」 高野 剛氏(JICA民間連携室 参事役)
⑤パネルディスカッション
<ヤクルトはBOPビジネスの先駆者か?>平野博勝氏(元ヤクルト専務取締役国際本部長)
・最近、BOPビジネスの元はヤクルトである、といった話がある。
・ヤクルトは元々BOPビジネスを狙っていたのではない。
・ヤクルトは「病気にかからない医学」としての予防医学を掲げ、インフラの整っていない国に蔓延する、腸に関する病を治そうと試みた。
・現地国の人々は、薬品など高くて買えず、まして病院へも行けない。
・「ヤクルトレディ」のシステムを使い、生活意欲と収入意欲の高い現地の女性を教育し、ヤクルトの販売。
・その収入によって女性たちは子供の教育費や生活必需品を充実させていった。
⇒このように、BOPビジネスは「selling to」だけではなく、BOP層を販売やサプライチェーンの中に参加してもらうということもある。
<情報通信技術を利用した事業>
アシル・アハメッド氏(九州大学システム情報科学研究院特別准教授)
・『One village, One Portal Project』は一つの村に対して一つのWebサイトを立ち上げ村の基礎データや村の抱える課題を世界に向けて発信するプロジェクト。
⇒これによりBOP層の情報を得ることができる。
・我々はBOP層が利用できる金融システム、 e-Passbookプロジェクトの現地実験を行った。
・まず、ICカードでクレジットが行えるようにした。
・しかしそれでは実際何が行われているかが分からない為、ICカードにdisplayを入れた。
・しかしdisplayは消費電力がかかるのでソーラーパネルも組み込み、電力がないところでも使えるようにした。
・しかしこのままでは商品の値段が高いので同じICカードで公共機関でも利用できるように多目的化した。
⇒このように現地のニーズをくみ取って困難を解決する商品開発を行うことが必要だ。
<NGOからみるBOPビジネス> 冨野岳士氏(国際協力NGOセンター事務局次長)
・NGOとしてはBOPビジネスが貧困削減に資するということに対して懐疑的。
・BOPビジネスが1日1ドルで暮らしている人々とビジネスできるかどうかに疑問。
・ビジネスで仮に所得が上がっても、それに伴って人権や環境、資源の争奪の危険。
・BOPビジネスが現地の人々が望む形で事業が行われるものかという点にも疑念。
・企業には根本的な課題の解決を見抜いてほしいと考える。例えば、非識字の人々に優しい商品を作ることも良いが、識字能力を高めることが重要だ。
⇒我々は現地の人々に望まれるBOPビジネスとは何かを考えなくてはならない。
<実際に現場へ行った実感と民間企業の立場> 富田秀実氏(ソニーCSR部統括部長)
・農村ではゴミ箱などない。元々自然循環型社会であり、ゴミなんか出なかった。
・そこで、小分けで売られているパッケージのゴミや洗剤が溶けた水道水を垂れ流しにすることが現地社会にどんな影響を与えるかを考えなくてはならない。
・我々がアイデアを持って現地に行ってもそれが真に彼らが求めるものでないこともある。
・我々が新たな提案をしていくことは良いが、BOP層がお金を払う価値のあるものを作らなければならない。
・現地企業にはできない開発効果を提供したい。
<援助機関から見たBOPビジネス、民間との連携>原田勝広氏(日本経済新聞社編集委員)
・非営利セクター(政府・NGO)が行ってきた援助では限界があった。
・地球益を求めて、2000年にMDGs(Millennium Development Goals)が採択され、今まで連携することのなかった営利体と非営利体が「MDGs」という言葉で共通の目標を持った。
・その後国連やUSAID(米国国際開発庁)など援助機関が企業との連携を図ってきた。
・今回のJICAの支援制度はやっと日本が世界の潮流に追いついたという感じを抱く。
・民間企業と援助機関、そしてNGOとの連携はイノベーティブなアプローチを可能にする。
<今回のJICAの支援制度について> 富田秀実氏
・本音としては、支援自体を頂けるのなら何でも良い。
・問題は社内のコンセンサスを得ることだ。
・我々民間企業にとって支援制度をどういう風にうまく活用するか、という視点が大事だ。
・JICAさんに望むものはスピード感。お役所的仕事は避けて頂きたい。
・事業の中で得られた知見は極力社内で確保したい。しかし政府系のお金である以上情報公開が必要なのもわかる。そのバランスをいかにとるのかを考えて頂きたい。
<国連機関と民間の連携について> 村田俊一氏(UNDP駐日代表)
・政府開発援助とNGOだけでは人間開発を効率的に行えない。
⇒MDGsのゴール8において民間とのパートナーシップが組まれたのだ。
・企業にとって、途上国進出のエントリーポイントはCSRでも構わない。
・国連のブランドネームを大いに活用するのも良い。
・透明性を高め、知識・支援・資金の共有が大事。
・BOP層のキャパシティが高揚するものであることが望ましい。
<日本国としての力を発揮する制度が必要> 平野博勝氏
・「民間は民間で」といったfeelingを捨てて、日本国全体としてどうあるべきかを考える必要がある。
<ボーダーレス化するCSR> 原田勝広氏
・CSRは国境を超え、さらにはNGOとの連携という意味で、営利と非営利の壁をも超える。
・NGO・NPOの事業化、企業の社会化という双方の歩み寄り。
・NGOには、ただWatchするだけでなく、自らが事業に挑戦してほしい。
感想:盛りだくさんのセミナーでした。ただそれだけ、日本の「BOPビジネス」についての論議はまだまだ深めなければいけないものだということを感じました。いずれにしても、欧米等が10年前に始めていたことを今から本格的に行おうというのだから、BOPビジネスが「日本としてどういう位置づけ」にあるのかというビジョンを示すことが重要だと考えます。



