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1月 10【Interview】vol.9 JICA
独立行政法人 国際協力機構 (JICA)民間連携室 参事役 高野 剛氏
BOPビジネスへの取り組み
2008年10月の新JICA設立を機に、民間企業との連携をいっそう強めていくために「民間連携室」が新設されました。それまでも民間企業との連携は例えば途上国でのインフラ整備などの面では多くの実績がありましたが、CSRやBOPビジネスとの連携ということになると限られた実績しかありませんでした。
そこで、平成20年度の後半から、JICAとしてBOPビジネスについての知識や理解を深めようということで、まずBOPビジネスについての外部有識者や企業関係者などをお招きし、JETROと共催で「BOPビジネス勉強会」を開催しました。その中で、外国の企業や援助機関、国際機関などが10年ほど前からBOPビジネスのポテンシャルに注目し、援助機関などが企業との連携制度を立ち上げ、連携実績も既に相当あることがわかりました。この勉強会を通じ、我々JICAとしてもBOPビジネスの持つポテンシャルをもっと深く掘り下げていく必要性を強く感じました。
そのため、平成21年度には、JICAのBOPビジネスとの関わり方を具体的に考えていこうということで、現地調査、外部有識者による研究会、公開セミナー(注1)などを含む「BOPビジネス調査研究」(注2)に取り組んでいます。
当室から見て感じられる最近の傾向として、立ち上げ時にCSR活動の一環と位置づけるところと、当初から事業部門が本業として取り組むところの違いはありますが、民間企業の中で、本業の強みを活かしてBOPビジネスに取り組もうという関心が少しずつ高まりつつある、ということです。そのような日本企業側の変化も受けて、今まで例がなかったに等しいBOPビジネス連携を積極的に取り組んでいこうと考えています。私たちJICAの役割は、民間企業やNGOがBOPビジネス、ソーシャル・ビジネスを始める際の、促進、後押しをすることだと考えています。
経済産業省も国としての支援策を検討するため「BOPビジネス政策研究会」を実施しています。(注3) またNGOの中でも、企業とのディスカッションを重ねるなど、BOPビジネスへの関心が非常に高まっています。(注4)
BOPビジネスへの期待と限界
BOP層についての国際的な定説と言えるようなものはまだ確立していません。JICAとしては、貧困というものを家計所得の水準の高低だけで判断するのは適切ではないと考えています。所得が低いだけではなくて、例えば基礎的な保健医療や教育さえも受けられない脆弱な立場の人々、女性、少数民族、障害者、HIV/AIDS感染者、低カースト層など、さまざまな差別に遭って、社会的に孤立化させられている人々、つまり、社会や開発プロセスから除外されて相対的貧困の状態にある人々も対象として広く捉える必要があります。
民間企業がBOPビジネスに関心を持ち取り組み始めることを促し、また途上国での具体的な事業において連携することによって、国連ミレニアム開発目標(MDGs)などとも関連性のあるBOPビジネス、ソーシャル・ビジネスが企業、NGOによって積極的に展開されるようになること。それはまさにJICAのミッションに合致することです。単に企業の途上国進出を支援するだけ、ということとは違って、その側面に加えて、JICAは現地の事務所や人員、情報やネットワークなどをはじめとする開発援助機関としての強みを活かしながら、途上国の人々の生活・生計の向上という効果も合わせてもたらすBOPビジネスと効果的に連携し促進することができると考えています。
企業はBOPビジネスでは、設定する価格帯を当然低く抑えたものにして、BOP層に対してモノやサービスに価格を付けて提供するわけです。しかし、貧困層の中でも最貧困層の人たちにとっては、それらを購入すること、対価を支払うことが難しい場合も少なくないと思います。BOPビジネスも決して万能ではありません。そのような場合は、途上国政府の事業で、あるいは、JICAのような開発援助機関やNGOの途上国支援で、彼らの基礎的ニーズが満たされるよう無償配布の形で最貧困層に提供することを継続・充実させていく必要もあると思います。
企業、NGOへの期待
対象顧客層となるBOP層にとっては、一番大事な命や健康に関わる食糧、栄養、健康などの問題、子供の基礎教育に関わる問題をはじめとして多種多様なニーズがあるわけですので、企業やNGOには、彼らの生活が改善されることにつながるようなBOPビジネス、ソーシャル・ビジネスを様々な分野、業界で取り組んでいただければと考えています。
BOP層の消費者に支持される商品やサービスの提供はもちろんですが、さらに、BOP層自身がビジネスに携わる部分を少しでも広げていけるようなビジネス・モデルを考えていただくことも非常に大切です。BOP層にサプライチェーンに入ってもらう、そしてBOP層にとってのビジネスの取引や雇用を創出し、また、彼らが自らの経済活動、生産活動を発展させていくために必要な投入財やサービスを提供することも期待しております。それがBOP層の所得や購買能力の向上、そして現地の消費者、社会、政府からの支持の拡大にも繋がります。そして、BOPビジネスのキーワードの一つでもあるwin-win関係の構築を可能にし、企業にとっても中長期的にプラスになるはずです。
BOPビジネスはあくまでビジネスですので、当然コストをきちんと回収して採算をとり、社会の役に立つ事業を拡大していくための再投資に必要となる利益を生んでいかなければなりません。とはいえ、BOP層に向き合う時、相応のリスクやコストが伴うことから、短期間に利益を生み出すようにすることは容易なことではなく、企業にとってチャレンジの部分も多いと思います。
その意味で、JICAのような機関と連携していただくことで広がる可能性もあると思うので、JICAが今春立ち上げようと準備中の提案公募型の「BOPビジネス促進制度」(仮称)にも関心を持っていただき、優れたご提案を頂ければと期待しています。
注1:「BOPビジネス公開セミナー」の案内のURL
http://www.jica.go.jp/event/pdf/100118bop.pdf http://www.jica.go.jp/event/pdf/100119bop.pdf
注2:JICA BOPビジネス調査研究の関連サイトのURL
http://gwweb.jica.go.jp/km/FSubject9999.nsf/3b8a2d403517ae4549256f2d002e1dcc/b2cfb142b4a076cc4925762500341a35?OpenDocument
注3:経済産業省「BOPビジネス政策研究会」の関連サイトのURL
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/k_5.html
注4:特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)のCSR連携NGOネットワークの関連サイトのURL
http://www.janic.org/more/companyngo/csrngonetwork/index.php
~編集後記~
JICAと民間が協働すると、どのようなシナジーが生まれるのか。海外協力隊に行く友人の話を聞きながらそんなことを思っていた矢先、高野様のお話を伺うチャンスに恵まれました。
お話を聞いていて感じたのは、各セクターがそれぞれの役割を認識すること、同時に自社の強み、弱みを改めて見つめなおすこと、足りない部分は相互補完しあうこと。単純な様で、それが全くできていないのがこれまでの現状なのだろう、と感じました。
民間連携室をはじめとした、JICAの今後の動きに注目です!
株式会社Granma
熊坂 惟
