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2月 10【News】日経サイエンス2005年12月号 特集 地球の未来 農業と水資源
日経サイエンス2005年12月号の「特集 地球の未来 農業と水資源」にてIDE(International Development Enterprises)の創設者であるポール・ポッラク氏のインタビュー記事が掲載されていたので。興味深い部分をまとめました。
緑の革命以後の農業のあり方に対して提言がなされている。
<全世界人口を食べさせていくこと、貧困を無くすこと、二つの課題>
・ 2050年には現在の世界人口の1.5倍である90億人を、農業に用いる土地や水をあまり増やさずに食べさせていかなければならない。
・ 1950年以来、緑の革命によって全世界の農業生産が大幅に拡大したにもかかわらず、貧困はアフリカアジア、南米に根強く残っている。
・ 大規模な農地の生産性を引き続き高めることは食糧供給の点で重要な役割を果たすだろうが、貧困から人々を救いだすには、安価な個別の灌漑システムを小規模農家に供給するという地域的な努力がより良い方法となるだろう。
<緑の革命の成果と依然存在する貧困>
・ 緑の革命の成果の一つは全世界の灌漑面積を広げたことで、1950年の1億ヘクタールから現在の2億7600万ヘクタールへ増加した。これは自給自足の農民や都市住居者の貧困を軽減することに貢献した。
・ しかし、その効果は人口増加によって相殺された。一日2ドル未満の人は26億5000万人から27億4000万人に増加した。
・ 緑の革命が目的としていたのは、農村部の貧しい人々の収入増加ではなく、全体的な食料供給の増加だった。だから、貧困や飢餓を撲滅できなかったのは驚くにあたらない。
・ 緑の革命での貢献でノーベル平和賞を受賞したボーローグは、世界から飢餓を減らすために「緊急時には食糧を送るべきだが、長期的な解決方法は、特に途上国の自給自足の農民の農業生産に革命を起こすことだ。」と述べた。つまり食糧供給を増加させるだけでなく、職を生み出し、余剰穀物を売ることで新しい収入をもたらすということだ。
・ 緑の革命の供給主導戦略は、自給自足の農民の助けにはならない。コンバインなどの現代的な農機具は狭い農地では使いにくく、高価過ぎて割にも合わない。インドの自作農が1エーカーの農地で小麦を育てて余剰分を販売しても、カナダの大規模農家と競争することはできない。
<人力ポンプ>
・ ノルウェーの技師バーンズが1970年代後半に考案したこのポンプは、竹などその地方で入手できる素材で作った1組のペダルを人間が踏むことで動くもの。この人力ポンプを使えば、0.5エーカーの野菜畑に水を供給でき、コストはわずか25ドルである。
・ バングラデシュでは地下水の巨大な帯水層が農民の足の下わずか数mのところにあるので、ペ ダル式ポンプの使用がとりわけ適している。
・ バングラデシュでは5カ月の乾季の間は、ほとんど何にも栽培しないのだが、ペダル式ポンプを用いて野菜を育てることができる。余ったものは村の市場で売り、子供を学校に通わせることも可能にした。
・ 貧困を減らすには、先進技術を用いた計画よりもペダル式ポンプの方が優れていることが判明した。ペダル式ポンプを購入したバングラデシュ農家の総数は150万戸で農民の年間収入の増加額は1億5000万ドルであった。ポンプへの総投資額は4950万ドルであったが、同面積の農地を従来のダムや水路システムで灌漑する場合のコストは15億ドルにも達する。
<アフリカ特有の困難>
・ アフリカの多くの地域では、バングラデシュとは異なり、地下水面が深すぎてペダル式ポンプの 使用が難しい。手押しポンプならば地中から水をくみ上げられるが、設置コストが1500ドルもかかり、ほとんどのアフリカ人にはこれを支払う余裕はない。
・ しかし、村民が水使用についてグループを結成すれば、手押しポンプの為のローンが組める。30家族がきれいな飲み水の為に年間7ドルをグループに払うとし、細流灌漑システムを購入するために15家族がさらに20ドルを投資すると仮定しよう。各農家は果物やや愛を売ることで年間100 ドルを余分に稼ぎ、そこから30ドルをグループに出す。グループは年間210ドルを、灌漑メンバーから年間450ドルを集めることになる。その額で運転費用をまかない、4年間で1500ドルのローンを完済できる。
・ この戦略は手押しポンプの設置コストを補助金でまかなうよりずっと効果的だ。というのは、一般 にポンプを自分たちで所有するようになると、より適切に管理するようになるからだ。もちろん、このアプローチは全ての村に有効とは言えないだろう。例えば、同じ井戸で飲用と灌漑用の両 方には十分な水を供給できない例もあるだろう。
<最貧困層への灌漑システム>
・ 途上国の灌漑設備のある農地のほとんどは、何世紀も変わらないままの非効率な地表灌漑水法に頼っている。その結果、何百万平方kmもの良質の耕作地が、水浸しになり、塩害を起こし、過剰な水のくみ上げによる地盤沈下や地下水面の低下で失われている。
・ 最も、貧しい層の農民はさらなる問題に直面している。彼らの多くは半乾燥地帯にある生産能力 の乏しい土地で耕作している。地表水や井戸からの水さえ十分に得られない人もいれば、雨水に全てを頼っている人もいる。
・ 水を作物に与える最も倹約的な方法の一つである細流灌漑は彼らにとって天の賜物となるはずだが、最貧層の農民にとっては細流灌漑システムでさえ高価過ぎて彼らのニーズに合わない。
・ 2001年、7年間の開発と実地実験の後、IDEは詰まりにくく効果的で低コストの細流灌漑システムを売り出した。これは従来の装置の1/5で販売され、各家族はわずか3ドルを投資すれば、40平方メートルの野菜畑を灌漑するキットを購入でき、それによって3倍に増えた年間収益の一部を再投資すれば、システムの適用範囲を1エーカー以上拡大することもできた。
<まとめ>
・ 貧困から抜け出そうと努力して農村の貧しい人々が自分の時間と金を投資することが必須である。重要なステップは、第三世界の起業家のエネルギーを引き出すことだ。
・ IDEは過去数年間にわたって毎年、10万世帯を超える貧しい農家を支援し、その年間総収入を1世帯あたり200ドル未満のコストで、500ドル増加させている。このペースが続くと仮定すれば、ミレニアム開発目標(約6億人、つまり約1億世帯が貧困から脱することを掲げている)を達成するには、200億ドルかかる。
・ これによってサックスが掲げているインフラの改善の全てをまかなえるわけではないが、新たな収 入を農村世帯にもたらし、子供たちを学校に通わせたり、農地や家、健康状態を改善するのに使われるだろう。さらに、このようなプログラムが民間の農業ビジネスに刺激を与え、新たに力をつけた農民が育てたトマトやナス、唐辛子などの高価値農産物の加工や等級付け、包装、流通を行う市場インフラが整備されるために同じ投資が行われることを私は確信している。
