19
4月 10続編「貧困を解決する技術とは?」~シューマッハ―の思想~
E・F・シューマッハの著作『スモール イズ ビューティフル――人間中心の経済学――』は「貧困を解決するためにどうすればよいか?」を考える上で必ず、読んでおきたい本である。
前回ご紹介したように、シューマッハーは貧困を解決するための大前提を、「雇用」において論じている。(詳しくはこちらをご参照ください)。
「開発政策の中心課題は、職がないので・・・単に消費者にとどまっている人たちに仕事の機会を与えることなのである。雇用がすべての大前提なのである。怠けている人間はなにものも生産しないが、貧しい道具しか持ち合わせない人でも、生産にプラスの貢献はできる・・・。」
それでは前回の引き続きとして、彼が提唱する中間技術とは何であるかをご紹介する。
まず、中間技術を象徴的に説明しているのが以下の文であろう。
「技術の水準を「仕事場当たりの設備費用」で定義するならば、典型的な発展途上国の土着技術は――象徴的にいうと――1ポンド技術、他方、先進国の技術は1千ポンド技術と呼ぶことができる。・・・発展途上国が1千ポンド技術の導入に努めているが、その結果、例外なく1ポンド技術をまたたく間に滅ぼし、現代風の仕事場ができる前に在来の仕事場を消滅させ、貧しい人たちをいっそう絶望的で無援の状態に追い込んでいる。いちばん助けを必要としている人たちを助けるには、1ポンド技術と1千ポンド技術の中間の技術が必要である。それを、これまた象徴的に100ポンド技術と呼ぼう。」
確かに先進国で用いられる技術は巨額の資金を要する一方で、雇用を生み出さないばかりか、伝統社会を壊して仕事を奪ってしまう、というのは我々の現代社会の歴史を見れば納得できる。伝統技術では富を生み出すことが十分でないことも理解できる。
しかし、中間技術が、雇用を生み出し、伝統社会を維持し、貧困をなくすことができる、というのは本当だろうか?
彼が中間技術の特徴について記述している箇所をまとめると以下のようになる。
中間技術は、
・土着技術よりもはるかに生産性が高いが、
・現代工業における複雑で高度に資本集約的な技術と比べると、ずっと安上がりなため、
・仕事場を比較的短期間に数多く作れるもので、
・この技術で使う道具は、簡単だから誰にでも使用でき、
・維持にも現場での修理にも向いている。
・さらに簡単な道具は、ふつう高度に複雑な機械と比べて、精選された原材料や厳密な仕様は要らないし、市場の変化にも順応しやすい。
・技術者の訓練もずっと容易であり、管理、統制、組織が簡単で、思いがけない故障等で困ることも少ない。
・だから適用の対象である比較的素朴な環境には、いっそうぴったりと合うだろう。
そして彼は、中間技術の必要性を、具体例を交えて以下のように説明する。
「ごく単純な例を考えてみよう。失業者の多い地域で整地作業が必要だとする。最新式のブルドーザーの使用からいっさい道具なしの完全手作業まで、技術には多くの選択肢がある。産出高はこの仕事の性質上一定であるから、もしも「資本」の投下が最小であれば、資本算出比率が最大になるのは明らかである。道具を全く使わなければ、資本算出比率は無限大となるが、一人当たりの生産性はきわめて低いだろう。最新の技術を使った場合は、資本算出比率は低く、一人当たりの生産性は非常に高くなる。いずれの場合も極端でよくないで、中間の道を探さなければならない。失業者の一部にはまず手押し車のような道具を造らせ、残りで「賃金財」を造ってもらう。これらの生産においても、技術はごく簡単なものから最新式まで、様々な段階があるだろう。いずれの場合でも、高価で複雑な道具や機械を買いこまずに、適当に高い生産性が得られるような中間技術を見つけ出さなければならない。・・・最新式のブルドーザーを入手する場合と比べればはるかにすくない「資本」の投入で、また「現代式」方法によるよりもずっと多くの(失業中の)労働力の投入によって、1つのプロジェクトが完成するだけでなく、地域社会がまるごと開発の軌道に乗ることになるだろう。」
さらに彼は、現代工業の必要性を訴える中間技術への批判に備えて、以下のように、記述する。
「中間技術の適用範囲には、もちろん限界がある。高度に洗練された現代工業の典型的製品で、現代工業以外では造れない製品というものはたしかにある。同時に、こういう製品は通常は、貧しい人たちに今日明日必要なものではない。貧しい人たちに一番必要なのは、建築材料、衣料、家庭用品、農機具といった簡単なものであり、農産品からの収入の増加なのである。彼らはまた、どこの国でも緊急に木や水や収穫物の貯蓄設備をほしがっている。多くの農民は、その産品の第一段階の加工を自分たちでできれば、大変助かるだろう。以上はすべて中間技術にとって格好の分野である。」
私が以前掲載した未来創造レポートVol.6では農機具の足踏みポンプによって、農民の収入の向上につながったという例をご紹介した。これもまた、現地の環境に適応した技術の例であろう。そしてこの足踏みポンプは現地社会に大きなインパクトを与えているのだ。
E・F・シューマッハーが唱えた「中間技術」は、約50年も前からずっと、「貧困をなくしたい」と考える人々に、興味深い示唆を与えてきたのだ。
