20
2月 11

世界を変えるデザイン展~その後の人々~VOL.2

 
暮らしの将来像をやわらかく描きだすようなデザインをしたい

日建設計総合研究所
安田啓紀さん



世界を変えるデザイン展に来場いただいた方々のその後の変化を追う特集、
「世界を変えるデザイン展~その後の人々~」。
第二弾となる今回、取材に協力して頂いたのは、日建設計総合研究所・研究員の安田啓紀さんです。

世界を変えるデザイン展「形にしないワークショップ」
安田さんは、世界を変えるデザイン展期間中に開催された、NPO法人プラス・アーツさん主催の「形にしないワークショップ 公開プレゼン ~若者の防災意識啓発、防災力向上のためにできること~」にご参加くださいました。

本ワークショップは、最終形の成果として「形」にすることを一義的に求めず、最終的なアウトプットにいたるまでの「プロセス」を重視したワークショップです。集められたメンバーは、デザイナー、アート、建築、都市計画、社会学、企業家といった多様な分野の若手たち。彼らは、テーマである「若者の防災意識を啓発し、防災力を向上させるためにどのような取り組みをすれば効果的か」について議論し、約2週間にわたって企画を練りました。

安田さんの参加したチームが提案したのが、iPhoneアプリ「もしも防災会議」。
普段の生活の中で、よく考えると自分のことを考えることがあまりない、という問題意識の下、
「もしも」からの防災施策を考えるというアプリを作成したのです。
「もしもあなたが日本の総理大臣だったら防災施策として何をする?」「もしもあなたが歴史上の偉人だったら?」といった質問を創る作業は、物事をもう一歩深く考えるきっかけとなります。質問式にすることで、普段意識に上がらないことに思考が巡るとのことです。
これは、ITに精通したメンバーの持ちネタであるアプリ製作と、多様なバックグラウンドを持つメンバーの問題意識をかけあわせた、まさにこのチームならではの企画です。
 

頭で考え仕組みを作るだけでなく、実感の中で見えてきた気付きを考える
日建設計では都市計画を専門とする安田さんですが、インタビュー中こんなことを語っていました。
「道路や建物のボリュームを決めるという意味での都市計画よりは、
暮らしの将来像をやわらかく描きだすようなデザインをしたいと思っています。」

自分が自分の街に住む理由、無意識のうちに嗜好している理由、そうした言葉にならないところに焦点を当てた都市計画を行うには、多様な人がプロジェクトに参画する事が求められ、そうした意味では、多方面からの参加者が集まったこのワークショップも、非常に有意義であったと語ってくださいました。

安田さんが、そうした「意識に上らない問題」「気づかない問題」に着目しているのは、モノをデザインするときに、「自分が、みんなが欲しているコトは何か」と問わねば新たな枠組みが見えないと考えているからだそうです。

それでは、「気付かない問題」とは何でしょうか?
例えば、銀行では、私たちは客であるのに、整理券を持たされ、長い時間待たされ、ブザーや番号で呼ばれ、最終的には数分のサービスしか受けられないといったことも少なくありません。実はこれには、サービスを提供する方もされる方も共に問題を抱えているのですが、共に気付かずに「当たり前のこと」と思ってしまいます。しかし、一度意識を向け考えてみれば「もっとこうなったら良いのに…」といった想いは存在するのです。このように、自分の行動は意外と意識していないものですが、改めて問うことで見えてくることがあります。

安田さんは考え方として、結論を決めつけてそれを落とし込むのでなく、根本から問い直し、何が一番の大きな問題であるかを考えるスタンスを持っている方だということが、インタビューをしているうちにひしひしと伝わってきました。そして、なによりも現場で何が起きているのか、誰が関係していて、いかに意見を汲み取るのか、といったことに焦点をあてています。
頭で考え仕組みを作るだけでなく、実感の中で見えてきた気付きを考える。
目の前に問題があるから解決する、というトンネル一通の解決法でなく、段階的に山を登り、その途中で一度全体を俯瞰するプロセスが必要であることを感じました。
 

「貧困」はモノを通すことで、その問題がより強く迫ってくる
安田さんは、このデザイン展を通して、それぞれのデザイン自体が非常に考えられたもので良かったと思う反面、「こんなことが問題だったのか」という気づきが生まれ、改めて問題意識が深まったといいます。
また、貧困を知る機会はテレビや本などを通して多々ありますが、それが物を通すことでより強く感じるようになるとおっしゃっていました。人々が貧困で困っている映像を見ても自分の現実とは離れているように感じるがが、実際に解決策を「モノ」として目の前に提示されたことで、貧困という問題が強く迫ってくるように感じたそうです。

「課題があること」。
それは皆、何となく知っていることです。貧富の差を何かしなくてはならないと多くの人は思っているはずです。しかし、その手法がわからない。そして、実感が伴わない。だから、自分には関係ないと感じてしまいがちです。
実感を持って物事を見てもらうことは、一番大きな問題を解決するための大きな一歩となるでしょう。

しかし、そうした物の可能性を感じる反面、値段が伴わないのであれば、本当に製品を必要としている人々の手に届かないのであれば、いかに優れた「世界を変えるデザイン」であっても世界は変わることはありません。
また、製品が広まる自体がよいことであるのか、製品が広まることで本当に課題は解決されるのか、そして、その製品が手元に届く意味は何であるか、そうした深い部分まで考えることも必要であると言います。
こうした「見えない課題」を踏まえてデザインを議論すれば、世界を変えるデザインは、また新たな段階へと進むかもしれません。

世界を変えるデザイン展という場所が、出会いの場となり、「気付き」の場となり、「実感」の場となり、よりよい社会の創造への歯車が回りだしたようです。
そして、安田さんのおっしゃっていた、「物として捉えることで、今まで非日常であった貧困という問題をより強く実感した」という言葉は、世界を変えるデザイン展の新たな可能性を感じさせられました。

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「~その後の人々~」シリーズの取材にご協力いただける方、ご連絡ください。
あなたの出会いと気付きと活動を、突撃取材いたします!

VOL.1はこちら

担当:株式会社Granma栗本、周東  連絡先:info@granma-port.jp





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1月 11

世界を変えるデザイン展~その後の人々~VOL.1

さばくで働く人の役に立ちたい!

古谷理彩さん
小学校4年生

世界を変えるデザイン展に来場いただいた方々のその後の変化を追う特集、
「世界を変えるデザイン展~その後の人々~」
記念すべき一人目の取材に協力してくれたのは、小学4年生の古谷理彩さん(以後「理彩ちゃん」)です。

世界を変えるデザイン展のQドラムにインスパイアされ、つくったプロダクト―「さばくで働く!水運車」
理彩ちゃんは、世界を変えるデザイン展にお父さんとお母さんと来てくれました。展示されていたプロダクトの中で、特にQドラムに刺激を受け、砂漠で働く人々の水問題に関心を持ったそうです。
その後、彼女は、「新エネ・太陽電池工作コンクール」に、「さばくで働く!水運車」という作品を応募。見事審査員長特別賞を受賞いたしました!その結果報告を、お父さんがメールくださったことが今回のインタビューのきっかけになりました。

このコンクールでは、「身近」な製品を使い、小学生でも手の届くような「安い」材料で作り、「生活の中で」利用できるような製品を考えます。
これに対し、途上国で求められている製品は、「容易」性に溢れ、「安価」で手に入り、日々の「生活をよりよくする」ものです。この2つには、類似性を感じます。

理彩ちゃんが構想し、工作した「さばくで働く!水運車」は、砂漠の強い太陽光を利用した、世界を変えるデザイン展で展示されていた「Qドラム」をモチーフにした水運車で、砂漠に暮らす人々にとって重労働であった水を運ぶという作業を楽にし、砂漠に暮らす人々の生活をより良くしようとするものでした。

元々は、タイヤそれぞれがタンクであり、池に入っていくと自動的に水を汲み取り、キャップも自動に閉まるものをイメージしていたようですが、形にしていく中で困難となったそうです。

こうして試行錯誤を重ね、実際にソーラーパネルで実際に動く水運車の模型を完成させました。実際に動いている動画を拝見させていただきましたが、子どもの想像力と技術との可能性を垣間見るようで感銘を受けました。

何事も頭で考えることと、行動に移すことは異なります。しかし、大事なのは行動に起こすことです。行動に移して初めてその壁を知ることができます。そして、壁を知ることは発展へのステップでもあるということを小学生に教えられました。

疑問をもつ、話し合う、考える。
また、理彩ちゃんと話している中で思ったことは、私よりも小さな小さな女の子が、貧困に対して、環境に対して、大人に負けないほど真剣に真っ直ぐに考えているということでした。
元々Qドラムのことは知っていたようですが、デザイン展で実物を見、様々な問題を間近で感じ、考えることがあったのでしょう。更に、感心したのは、Qドラムのみならず、多くの大人が未だ無関心な発展途上国の現状を彼女はすでに知っていたということでした。

幼いころから身近な生活では感じることのできない発展途上国の課題に感心があるのは、理彩ちゃんが身近なことから感じる「なぜ?」を、家族で共に考え、話し合っているその家庭環境に帰依すると、ご家族との会話の中で感じました。
このような環境下、普段から、テレビ番組、学校の募金活動、お父さん、こうした日常生活の様々な場面から、発展途上国のことを考えていたようです。

疑問を持つこと、話し合うこと、考えること。
簡単なようで難しいこれら3つのことを、理彩ちゃんは当たり前のように行っているようでした。

この時に感じたことは、
学校ではこうした社会的な問題は学ばないといいます。
現に、小・中・高で、世界情勢に対する問題に言及する教育の時間はほんのわずかです。
幼いうちから世界を考える力、世界に暮らす人々のこと考える力は十分に備わっているのに、環境がそうした芽を摘んでしまっている。つまり、子どもだからわからないのではなく、説明をしないからわからないのだということです。

無意識のうちに、疑問や矛盾に真正面からぶつかることができなくなっているのではないか
インタビューの中で理彩ちゃんから私たちに、こんな質問がありました。
「沢山の人がとても小さいうちに亡くなっちゃうって聞いたんですけど、本当ですか?」

その質問に対し、「本当だよ」と、アフリカ諸国での5歳未満時の死亡率の高さ、妊産婦死亡率の高さに、ついて話すと、
「日本では治せる病気でも死んじゃうって本当ですか?」
「どうしてそんなに早く死んじゃうんですか?」
(手術時の道具の不衛生さに対して)「手術の道具を清潔にすれば治るんですか?」
(伝統儀式による伝染病に対して)「間違ってると教えてもだめなんですか?」
と、真っ直ぐな質問を何度も問いかけてくれました。

こんな質問もありました。
「日本でデザインされたもので、(発展途上国で)実際に必要とされているものってあるんですか?」

この問いに、寝室で利用する、マラリア等を防ぐことのできる蚊帳(住友化学のオリセットネット)の例を採り上げると、
「外に出ちゃったらどうするんですか?」「アフリカの蚊は日本の蚊よりも強いんですか?」「外にいるときの解決方法はないんですか?」「日本の虫よけスプレーは効かないんですか?」
と、次々と質問を投げかけられました。

今まで自分が疑問に感じることなくすんなり受け入れてきた事実に対し、こんなにも多くの疑問が生じることに驚いたと同時に、深く感じたことがありました。

成長し、貧困を感じ、学ぶなかで、様々な疑問や矛盾が生じます。
しかし、大人になっていくにつれて無意識のうちに、そうした疑問や矛盾に真正面からぶつかることができなくなっているのではないかと感じました。
こうして、感情で受け取ったことを直接行動に移すのではなく、頭で変換していくうちに、様々な不安や社会のしがらみに打ち砕かれ、素直に行動に移すことができなくなっているのではないかと考えました。

理彩ちゃんの真っ直ぐな心は、真っ直ぐに行動につながっていました。

自分の感情を行動にうつし、”形”にする
私たちもテレビのドキュメンタリー番組を見たり、貧困に関する本を読んだりして、思うことや考えることがたくさんあります。しかし、その後、その現状を改善しようと、自ら行動に移すことのできる人が果たして何人いるでしょうか。

途上国に暮らす人々の生活やニーズを、「世界を変えるデザイン展」という場所で感じた10歳の少女は、自分のことだけでなく、素直な気持ちで世界の人々のことを考え、実際にそうした人々のためのプロダクトをその手で作りました。
知ること、感じること、考えること。ここまでは多くの人が成すことであります。
しかし、その後の一歩を中々踏み出せない人は、とても多いはずです。

本来、進んでお手本を見せなければならないのは大人であるはずなのに、たった10歳の女の子にお手本を見せられてしまいました。

彼女は「世界を変えるデザイン展」に来たことで、砂漠で働く人の役に立ちたいと考え、彼女なりの今できることをしました。自分の感情を行動に移し、「形」にしました。

皆さんは、「世界を変えるデザイン展」で何を感じ、何を考え、どんなアクションを起こしましたか?

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~その後~の取材にご協力くださる方は、是非ともご連絡ください。
「世界を変えるデザイン展~その後の人々~」レポート隊がお伺いいたします!





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